マンションリサーチ総合研究所

【第49回】マンションリサーチデータから算出される(簡易)キャップレート

第48回で述べたように、キャップレート(Capitalization Rate) とは、投資価値の判断(計算)に使われる還元利回りを指し、その数字はいくつかのシンクタンクなどが算出し公開されている。

早稲田大学国際不動産研究所が算出したデータを、(社)不動産証券化協会が発表しているデータは、年に2回公開されているが、この直近(2016年1月公開分)のデータを見ると、賃貸住宅(ファミリー向け)のキャップレートは、もっとも住宅賃料が高いと言われ3Aと呼ばれる赤坂・青山・麻布エリアでは4.4%となっている。城南エリアでは4.5%城東エリアでは4.75%と少しずつキャップレートは高くなっていく。キャップレートが高くなる=不動産価格は安くなるということだ。

マンションリサーチ社が保有する直近のデータ(2016年4月)で、これを検証してみたい。マンションナビで入力すると得られる想定賃料と想定売買価格を元に還元利回りを算出してみようという試みだ。ここでは、中古マンションの価格を収益還元価格(不動産から発生した1年間の収益を、その不動産から得られることが妥当な投資利回り(還元利回り)で割り戻したもの価格)により算出されたものという前提とする。
データの正確性を期すため以下のような操作を行った。

① 売買価格については、中古マンションの成約価格は公募価格から5%程度のマイナスの乖離があることから、95%として算出する。一方、賃料については公募価格との乖離は少ないため、100%で算出
② イレギュラー事例もあると思われるため、価格上下3%のデータは削除した

また、前述の不動産証券化協会の公表データにはない3つの指標も算出してみた。具体的には、東京23区全域、低層マンション(3階建て以下)のみ、タワーマンション(21階以上)のみ、という3つだ。

図1はこれらをまとめたものだ。

(図1)賃貸住宅のキャップレート

(図1)賃貸住宅のキャップレート

緑色は、マンションリサーチのデータをもとに算出したもので、青字は不動産証券化協会のデータである。後者は、投資用賃貸住宅を想定しての投資家アンケートをもとに算出されていることに注意して考察してみると、
① 収益還元価格の方が実際の取引事例価格よりも高い=投資用不動産は割高だと言えそうだ。
② 投資用マンションの投資家目線は、築15年内くらいを想定していると思われる一方、一般のマンションにおいては、築年数の物件も多数含まれるため割引率が高い(緑データ)と思われる。

マンションリサーチ社では、さらにデータの収集、分析の精度を高めていくことを検討している。ご期待していただきたい。

この記事を書いた人

吉崎 誠二
不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産研究所 理事長 
吉崎 誠二

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。
立教大学大学院 博士前期課程修了。
㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 等を経て 現職。
不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書:「データで読み解く 賃貸住宅経営の極意」(2016年2月)「2020年 大激震の住宅不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを買える人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
社団法人 住宅・不動産総合研究所:http://www.hr-i.jp/


2016年5月20日
レポート